出産物語

今回は、さやかママさんからご寄稿いただきました。


読んであげるよ

切迫流産の危機

妊娠がわかって大喜びしたのもつかの間、8週に入ったある日のこと。仕事中に違和感を覚えてトイレに行くと、驚くほどの出血がありました。「前回流産したときと同じだ。」また駄目になってしまったのだ ろうかと、嫌に冷静な自分がいました。職場に妊娠は伝えていなかったため、体調不良を申告して早退。すぐに地元の病院へ向かいました。タクシーで行けばよいのに、何故か電車で移動しました。冷静なようで パニックに陥っていたのでしょう。

待合室では、もう心拍は確認できないのだろうと恐怖心でいっぱいに。先生の「赤ちゃん頑張って生きてるよ!」の声に、涙が止まらなくなりました。「少しでも安静にしたほうが良い。家での安静には限界が あるから、できれば入院したほうが良い。」というアドバイスに、入院を即決。事情を伝えて派遣の仕事を辞め、2週間の入院生活が始まりました。

切迫流産での入院生活

とにかく動かないことが仕事の入院生活。本を読んだりインターネットをしたり・・・と時間をつぶしていました。インターネットは悪い情報に目が行きがちなので、今思えば見ないほうが良かったです。

数日に一度のエコーで赤ちゃんの心拍を確認するのだけが楽しみ。胎動がないので、自分では状況が何もわからないのです。

安静にして止血のための点滴を打っているにも関わらず、数日おきに多めの出血。こんな状態で赤ちゃんは育つのかと悪い方悪い方にばかり思考を巡らせてしまい、なんで私が?と夫に八つ当たりをすることも 。

結局2週間入院しましたが、自宅での絶対安静を言い渡されました。

いつまでもやって来ない安定期

自宅での安静は孤独で退屈でした。ワイドショーやドラマの再放送を見て時間を潰す以外にやることがありません。

外出は2週間に一度の検診のときのみ。赤ちゃんを見られるのが楽しみな反面、「お腹の中の血腫がなくなれば安心なんだけど」との先生の言葉に落胆するばかり。結局安定期と言われる時期になっても出血は 起こり、血腫の大きさも一進一退。私の妊娠中の最後の自由な外出は、あの大出血を起こした妊娠8週の出勤でした。

妊婦ライフってキラキラしたものではないの?

妊婦さんといえば大きなお腹をさすりながら、生まれてくる赤ちゃんのベビーグッズをお買い物、マタニティヨガで初めてのママ友を作り、一緒にランチ。

思い描いていた妊婦ライフは一つも送ることができませんでした。無事に生まれてくるかもわからず、ベビーグッズの準備もできない。普通でいいのにと自分の状況を恨みました。


産婦人科で診察

妊娠7ヶ月での破水

5ヶ月間も引きこもり妊娠生活を続けていたのに、その日は突然にやってきました。夕飯中に違和感を覚え、また出血?とトイレにいくと、バッシャーと破水。色がなかったのでいまいちわからず、「破水した かも?」と夫に伝えタクシーで病院へ。その頃には胎動があったので、赤ちゃんが生きてくれていることにだけ感謝していました。

いつ生まれてもおかしくないので、NICUのある病院へ搬送しますと人生初めての救急車に。すぐに出産かと思っていたら、1日でも長くお腹にいさせてあげましょうとNFICUに入ることに。ここでの2週間は想 像を絶するものでした。

一回目の入院とは異なり、本当に一歩も歩いてはいけない。立ってもいけない。座ってもいけない。管をつなぎトイレもNG。食事は横になって食べられるものだけ。床擦れができました。体中が痛いけれど、赤 ちゃんのためにはしょうがない。一人涙することも多かったです。

周りの妊婦さんも重症な方が多く、皆さん寝たまま大声で会話していたのが面白かったです。

2ヶ月半早い出産へ

クリスマスとお正月をそんな状態で過ごし、長くてもあと2ヶ月の辛抱と覚悟していたら、ある朝突然「羊水が減ってきたので今日生みましょう!」と先生に告げられました。ドタバタと帝王切開の準備が進み 、あれよあれよと手術室へ。

大きな病気になったことがないので、麻酔も初めて。本当に麻酔効いているのかだけが心配でした。気付いたら赤ちゃん出るよ~!とあっという間の出産。2ヶ月半も早く生まれた我が子は無事なのか?人間の 形をしているのか?と疑問だらけでしたが、産声を聞くことができて、もうそれだけで涙涙。

小さな小さな人間の形をした新しい命を見ました。早く会いに来てくれてありがとう。

出産が終わった途端、切迫早産の重症妊婦から、ただの健康体のママに。あっという間に体力も回復し、私だけ一足先に退院しました。娘は2ヶ月ほどNICUでお世話になり、予定日より少しだけ早く家にかえる ことが出来ました。

出産そのものよりも、妊娠にトラウマが出来すぎて、娘は一人っ子です。イライラする日も多いですが、出産時を思い出しては、ただ無事に生きてくれていることに感謝しなければと思います。