母乳との闘い

今回は、ちーちゃんママさんからご寄稿いただきました。


読んであげるよ

出産ってたくさんのドラマがありますよね。私も陣痛がとても長かったので、我が子との初対面は何にもかえがたい感動がありました。しかしその後すぐに自分の乳との戦いが始まるとは夢にも思っていません でした。

産後赤ちゃんとの対面

出産後、一足先に家族が子供と対面して歓声を上げていました。私はというと、一晩続いた死ぬ程の痛みからやっと開放され、ふんわりと気が抜けた状態。そんな時「ママのところにいこうねー」と助産師さん が赤ちゃんを連れてきてくれました。

赤ちゃんを私の胸元に置いて「はい、こんにちわ、ママですよー」と。ふわふわの赤ちゃんを抱くとママとしての自覚に胸が熱くなりました。

そのちっちゃい赤ちゃんはまだ目も開いていないようなのに、乳首を探ししっかり吸い付いてきて思わず驚いてしまいました。ちゃんと乳を吸うということが本能的に備わっているのですね。さすが哺乳類です 。

助産師さん曰く、最初に出る乳は「初乳」といって栄養が豊富で赤ちゃんにとって大事な免疫成分もたっぷりなので出来るだけ頑張ってあげてくださいとのことでした。その時は頑張ってあげる?の意味がよく 分からなかったのですが、とりあえず泣いたらおっぱいを飲ませてあげればいいのだろうと思っていました。

お互い初心者!悪戦苦闘の授乳

私のお世話になった病院では、基本はママと赤ちゃんは別室です。赤ちゃんは新生児室にいて、3時間起きの授乳の時間になるとママが授乳室に呼ばれるといった方法をとっていました。出産したその日から授 乳が始まりました。

少しベッドで横になっては、呼ばれて授乳室にいそいそと向かいます。私の赤ちゃんが泣いている!可哀想!早くおっぱいあげなきゃ!初乳は大事!ママという責任感だけは一人前でした。

ところが、あげる方も初心者であれば、飲む方も初心者です。角度が合わず、すぐ口からはずれちゃったり、赤ちゃんもすぐすやすや寝ちゃったり。授乳クッションの使い方も間違っているのかすぐ腕が痺れた りして悪戦苦闘していました。計測しなければならない飲む前と飲み終わりの体重も、あんまり変化なし。どうやら他の子は増えているみたいだけど。授乳って正直よくわからないなと思いながら授乳室に通って いました。

衝撃!母乳が出ていない!

こんな授乳室通いが数回続いた時、私の計測メモを見た助産師さんにこう言われました。「母乳あんまり出てないみたいね。」衝撃でした。え、母乳って自然に出てくるものじゃないの?赤ちゃんはてっきり満 足して寝ているものだと思いきや、吸っても吸っても出てこないから疲れて寝ていたのでした。体重が変化ないのも当たり前です。赤ちゃん、上手にあげられなくてごめんね、初乳は大事なのに、と申し訳ない気 持ちになりました。

最初は私のように上手く出てこないお母さんも結構な割合でいるみたいです。それでも赤ちゃんに吸ってもらって刺激したりマッサージや手絞りをしたりすることで段々授乳も軌道に乗ってくるとのことでした 。

それから授乳後、毎回助産師さんが手絞りで私の母乳を出すことになりました。それが本当に痛い!出産の痛みは覚悟していましたが、授乳まで痛い思いをするなんて想像もしていませんでした。1時間程の授 乳のあと、40分程かけてのように自分のおっぱいを雑巾絞りのように絞られ出てきた乳がたった10ml。もったいないので一滴もこぼさないように赤ちゃんの口に流し込みます。

それがやっと終わったと思っても3時間間隔なのでだいたい1時間後にまた授乳タイムです。

でも私は母乳を赤ちゃんにあげることが今の仕事。ママなのだから。たった数日間の入院ですが、一日中授乳をしっぱなしの毎日に気が遠くなりそうでした。私が入院していた病院は特に母乳推進の方針だった ので、とにかく母乳で頑張りましょう!と励まされ続けました。4日目の夜には、辛さのあまりベッドの中で声を押し殺して泣きました。

こんなことで泣いてしまうなんて私はママ失格なのだろうか。ほかのお母さんはうまくやっているのに。

ミルクという選択肢

落ち込んでいても授乳コールは3時間置きにやってきます。涙を拭いてトボトボと授乳室に行くと、同じ日に産んだ方と一緒になりました。

そのお母さんが看護師さんに言いました。「ミルクお願いします」えっ!ミルク!?その方に話を聞くと、産後すぐに仕事復帰を希望しているのでミルクでやっていく予定とのことでした。助産師さんは母乳育 児を勧めてくるけれど自分はそのつもりがないのでミルクをお願いしていると。その方の赤ちゃんはミルクを20分程ですっきり飲んで、さっと授乳室を去っていきました。

その時何か憑き物がとれたかのような感覚になりました。辛いときは辛いと言えばいいし、自分の子育てなのだから、自分のしやすいようにすればいいのです。私は母乳を出せない母は悪だと、自分で勝手に思 い込んで追い詰めていたのです。

そこで助産師さんに、しんどいので1回分授乳をお休みしてミルクを使いたい旨を伝えると快く対応してくれました。なんだ、こんな簡単なことだったのか、と拍子抜けです。その1回分のおかげで私は数時間 よく眠れました。おまけに急に母乳がしっかりと出始めたのです。赤ちゃんの体重も増え始め、満足そうに寝てくれるようになりました。


授乳室でミルク飲み

短く長い闘いの終わり

それは私の、短いけど体感ではすごく長い母乳との闘いでした。もちろん軌道に乗ったのは毎回私の母乳絞りに付き合ってくれた助産師さんのお陰でもあります。

ただ、これから出産される方は、ママという責任の重さに自分を追い詰めがちだと思いますが、辛いときは周りに助けを求めていくことが一番だと思います。私のように少し休んでみたらうまくいくということ もあるかもしれません。子育てに間違いなんてないのだから、何を選択したとしても誰もあなたを責められません。自分らしく親も子も健やかに過ごす方法を見つけていって欲しいと思います。